ずっと忘れないで　きっと忘れないわ

井都万さんが既婚者と知ったのは、初めて2人きりで一緒に帰って、ホームで電車を待ってる時。
私は、彼が既婚者だって知った上で、一緒に食事するのを了解した。
彼も、自分自身既婚者なのに「上司」っていう肩書きを使って、私を誘ったわけですね。


でもね、井都万さんが既婚者だって、その日以前に知ってたら。。。
もしくは好きになる前に知ってたら、多分踏み込んでないと思う。
だってわざわざ既婚者を好きにはならないでしょう。
魅力を感じても、「ああ結婚してるんだ。大事な人がいるんだ」って思ったら、そうかーって思いとどまる。
そして、多分上司としていい人だな、とかそう思ってただろう。


しかし、一緒に帰った時に、私が思い切って「結婚してるんですか？」って聞いて発覚した事実だから。
そこで、結婚してるから一緒に食事しないっていう考えはなかった。
井都万さんが好きだったから。
こんな、一緒に帰って更に食事なんて！素晴らしすぎるチャンスを逃したくなかった。



井都万さんの私生活は、はっきり言って謎だった。
モテるのかモテないのかもわかんなかったし、家族の話をする人じゃなかったし、それに結婚指輪もしてなかった。
毎日飲みに行ってるって言ってて、勝手に独身だと思い込んでた。
まさか結婚してるなんて。。。
好きになっちゃってから知ってしまったからなあ。
それで食事誘われて、終電まで一緒にいて。
見事に心を奪われてしまった。



彼は覚えているだろうか。記憶から消し去ってしまってる？
私を誘ったこと、あの日話した内容、あの日の感情、あの日の行動。
私はまるきり全部鮮明に覚えているわけではないけど、大体覚えているし、思い出せるよ。
例え忘れても、すぐ思い出せる。



井都万さんは、あの日のこと、思い出したりするだろうか。